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◆奪われし未来 【増補改訂版】 |
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シーア・コルボーン&ダイアン・ダマノスキ&ジョン・ピーターソン・マイヤーズ・著
長尾 力・訳/井口 奏泉・解説/翔泳社/1400円 |
1997年に発刊され、世界中で翻訳された銘書ですので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
化学物質・環境ホルモン(内分泌系撹乱物質)による環境汚染と、その危険性について一石を投じたこの本は、化学全盛の現代社会が生んだ環境ホルモンの影響で、生態系に異常をきたし、生物は徐々に子孫を残せなくなって行くという、大きくも恐ろしいテーマに沿って進んでいきます。
そして、化学の進化に酔いしれた人間は自分自身の手で未来を閉ざそうとしているのであると、警笛を鳴らし続けています。
但し、環境ホルモンといっても、その正体と作用については化学的な裏付けに乏しく、具現的な内容を明示できる資料もさほどある訳ではありません。
実際に多くの科学者があくまで仮説・推論の範疇を出ないものとして環境ホルモンを扱う事が多いのが現状です。
たとえばその毒性の強さからよく目の敵にされ、悪の代表と忌み嫌われるダイオキシンですが、1970年前後がピークで、以後順調に改善を続けているというデータも出ていますし、それらが発ガン性やホルモン作用を促すのかどうかも臨床レベルでのデータが存在していないため人間にどれほど作用するのかわかっていません。
しかし、間違いなく言える事は、ダイオキシンや環境ホルモン以外にも、人体に対して有害な物質が数多く存在するという事。
そして世界中の生態系及び生理機能の異常は化学物質の生産とほぼ期を同じくして起こっているという事。
それらだけでも充分危険性を予感させるに足りる材料であると私は思います。
ちなみに本の内容的には同時期に発刊されたデボラ・キャドバリー・著の「メス化する自然」とほぼ同じです。
どっちを紹介しようか悩んだのですが、環境ホルモンによる問題を具体的な数値と論説で語っている本書のほうがこうした環境問題の本としてはベストなのかな?と思いましたのでこちらを紹介致しました。
ただし、メス化する自然よりも本書のほうが理路整然とした文体や記述であるため、ややとっつきにくい感があります。
また、優に450ページはあろうかというボリュームですので、一気に読みふけるというのは厳しいかもしれません。
それさえクリアすればなかなかの良書である事は確かです。
将来への不安が加速してしまう懸念はありますが、是非お手にとって読んでいただきたい一冊です。
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